黒松は元来丈夫で威勢の良い樹木であり縁起の良い樹木として古くから親しまれてきました。それだけに盆栽として仕立てるには、いろいろと気を配る必要があります。ここではそうした黒松の基本的な管理方法をお伝えします。
銘:高尾
樹齢:40年(推定)
樹高:36cm
樹幅:45cm
コメント:四国香川県産、立上り良
銘:大雄山
樹齢:65年(推定)
樹高:58cm
樹幅:64cm
コメント:四国香川県産、太幹
銘:八海山
樹齢:23年(推定)
樹高:50cm
樹幅:56cm
コメント:根張り良好
銘:穂高
樹齢:20年(推定)
樹高:55cm
樹幅:50cm
コメント:八房
銘:剛山
樹齢:15年
樹高:48cm
樹幅:41cm
コメント:根張り良好
黒松は適度な肥料と水を施せば生育旺盛な樹木で、5月の連休頃になるとみどり芽が伸びてきます。このみどり芽を放置しておくと間延びした枝葉になってしまいます。そこでこの伸びたみどり芽を元から5芽残して指で折ります。(注意:はさみを使うと枯れ込むことがありますので、はさみは使わないで必ず指で摘まんで折って下さい。)
みどり芽摘みをおこなって1ヶ月が過ぎた頃、新葉が展開し茂ってきます。この時期(6月中旬〜下旬)に芽切りを行います。芽切りをおこなわないと間延びした枝葉の黒松になってしまいます。枝が充実し短葉の黒松にするには芽切りは欠かせません。芽切りの方法は、今年伸びた新芽を全て元から剪定ばさみで切ります。(芽切りと古葉調整は必ず組み合わせて行って下さい。・・・古葉調整を参照して下さい。)
黒松の新芽は場所や日当たりによって勢いの良い芽と悪い芽があり、そのままにしておくと勢いの良い芽だけがどんどん伸びてしまいます。そこで古葉調整をおこなって新芽の生育を平均化します。古葉調整は芽切りと組み合わせて行います。方法は上記の芽切りを行った時に勢いの良い新芽を切った箇所の古葉は3本(3箇所×2本)残し残りは全てピンセットで抜きます。中程度の新芽の箇所は4本、弱い新芽の箇所は5本残します。つまり勢いの強い新芽程古葉をたくさん抜き、勢いの弱い新芽程抜く量を減らします。(これは目安ですから新芽の強弱のよって調整して下さい。)(注意:ピンセットで抜くときに”はかま”は残して下さい。)こうして古葉調整を行うことによって再び出てくる二番芽の平均化をはかります。黒松盆栽ファンならぜひ覚えておきたいテクニックです。
秋10月になるとすっかり新葉も出揃い美しい姿になりますが、この時期に古葉刈りをおこないます。古葉刈りは古葉調整時に残した古葉を全て抜く作業です。抜き方は古葉調整時と同じくピンセットで”はかま”を残して抜きます。
黒松の植替えは基本的に3月中旬におこないます。まずは古い鉢から抜いた黒松の根張りを美しく出します。次に長く伸びた根を整理します。(注意:根は垂直にはさみで切って下さい。)新しい鉢の鉢底に赤玉大粒か中粒などの粗めの土を敷きます。その上に用土を敷きます。用土は<赤玉中粒2、赤玉小粒2、桐生砂3、川砂3>但し若木ほど桐生砂・川砂を多めにします。そしたら黒松を入れて良く擦り付けて用土と根底を馴染ませます。次に用土を入れたら割り箸などで良く突き用土と根を馴染ませます。最後に用土の表面に化粧砂や苔を敷きます。全ての作業が終わったら、鉢底から流れるくらいにたっぷりと水をあげて下さい。
黒松は肥料を好む盆樹です。肥料が不足すると貧弱な枝葉になってしまいます。1年を通じて肥料を絶やさないようにしっかりと与えて下さい。肥料は有機肥料の油粕と骨粉の混合肥料が適します。形状は固形肥料で醗酵したものがよいです。与える量は6号鉢で中粒8個程度。春は多めに与えます。(8個)夏と冬はやや少なめにします。(6個)秋は冬に向けての体力作りの意味から春より更に多めにします。(10個)但し、植替えの後1週間は肥料を与えません。
黒松は水を好みます。水を与え過ぎてもよっぽどの事がない限り根腐れを起こしませんから安心して水を与えて下さい。逆に水が切れてしまうと若木などは枯れることがありませから水切れには注意して下さい。与え方は鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えます。与える量の目安として、春と秋は毎朝1回たっぷりと与えます。夏は朝と晩に2回与えます。朝は鉢元にたっぷりと、晩は頭からシャワーのようにかけます。冬は2日に1回与えます。これはあくまでも目安ですから基本的には用土の表面が乾いたら水を与えます。
秋の剪定は10月中旬から11月上旬にかけて行います。通常は古葉刈りと併せて行います。秋の剪定のポイントは大きな改造はせず、冬の日差しを枝の奥まであてるために、余計な小枝を切ったり、ごつくなった枝先をすいたり、混み合った枝を整理したりする程度にとどめます。また車枝や平行枝など樹形を乱す枝を切ります。